ラグジュアリーブランド店長ブログ

(26)コロナ後の変化に対し、以前のやり方を変えられないスタッフ。頭ではわかっていても行動が伴わない!

以前はここまでしなくても売れたのに‥スタッフのモチベーションの低下が心配

東京も含めてGO TOキャンペーンがスタートし、「出かけてもいいよ!」とようやくお許しが出たことで、街にはコロナ前とそう変わらない人出や動きが見られるようになった。
もちろん入場・入店制限はあるものの、季節の変わり目ということもあり、ポジティブな気持ちで買い物や散歩を楽しむ空気が漂っている。
ようやく本来の販売のリズムを取り戻し、お客様に対しても積極的なセールスができる状況が整ってきた。
しかし、現実には販売スタッフは大きく2つに分かれている、ということに気づく。

1つは、マスク越しではあっても「コロナ、大変でしたね~」という共感を含め、お客様と会話を弾ませ、着実に売り上げにつなげているスタッフ。
もう1つは、積極的にアプローチするものの、空振りに終わり、思うような数字につなげられていないスタッフ。
当然、前者は「次の人にも楽しく接客してお買い上げいただこう」という好循環に入り、後者は「次こそ!」という焦りから逆にスムーズに接客できず、空振り。それによる悪循環に入り、どんどんモチベーションの差が大きく開いてくる。
店長としては売れる人に対してはほめる要素が多々あるのでさほど苦労しないが、がんばっているのに成果が出ず、そのことでどんどんネガティブになっていってしまっているスタッフに対し、どのように対応すればよいか気を遣うところである。

store, clothing, shop

「もっと~してみたら?」「○○さんはこうして売れたから、あなたもやってみたら?」「ポジティブに考えてがんばろう」とアドバイスすることは大切だ。且つ、それで翌日からガラッと変わってくれるのであれば問題はない。
ただ現実には往々にして、「はい」「がんばってみます」「そうですね」と口では言っていても、行動が伴わず、店長から見るとそれがまた気になって仕方がない、という状況に陥る。
結局は「どんな風にサポートしてあげれば、このスタッフの売り上げにつながり、自信をもってもらえるのか?」「プライドを傷つけずにやる気になってもらえるか」をあれやこれや考えざるを得ない。当然答えは1つではない。

ただ、このようなケースは店長にとっては、目先の数字だけでなく、スタッフが新たな環境下で売れ続けるために何が必要かを中長期視点で掘り下げて考えて対応するチャンスでもある。
そのためには、まず事実をもとに「なぜがんばっているのに購買につながらないか」の要因を徹底的に洗い出すことが大切である。
努力の仕方だけでなく、努力の方向性そのものにずれはないか?何をやっていて、何をやっていないのか?日ごろの行動や接客を観察することで、本人も気づかない事実をきちんと見ていく必要がある。
そのうえで、さらにその奥の要因を掘り下げる。

以下は、ある店長が売り上げに伸び悩んでいるスタッフを見事に復活させた事例である。

person, girl, human

その店舗では、顧客を創るためにも「お客様にアプローチしたあと、すぐ商品の話をするのではなく、アイスブレイクで心を開き、お客様がお話ししやすい空気を創ることが重要である」というトレーニングを行い、やり方も教えてきた。にもかかわらず、該当スタッフはそれを丁寧に行っておらず、すぐに商品をもってきて説明に入っている、という接客パターンを変えていない。店長はそれを責めるのではなく、スタッフの接客を観察し、その行動の奥にある要因をいくつも洗い出してみた。

*「涼しくなりましたね」と声をかけてもあまり反応がないので、気まずくなり「今日は何をお探しですか」といつものパターンに入
る。
→反応が薄い時の次の質問や話題が用意できていないのではないか?
→事前にお客様を観察して、「こういうパーソナルなお声がけをしよう」という準備をしていないのではないか?
→アイスブレイクは「販売」から離れ、自分自身も心を開いてお客様とお話をしたい、リラックスしていただきたいという気持ちで臨
むという“余裕”まで至っていないのではないか?
・・・

*ではなぜ、以前から重要性を伝えているアイスブレイクに取り組んでこなかったのか?をさらに掘り下げると
→以前はインバウンドや目的外の方がもっといらっしゃって、そこまでしなくてもスムーズに売り上げにつながっていた
→逆に「旅行中だから」と急がれるお客様も多く、「無駄に時間をかけてはいけない」という思いで接客をしていた
→アイスブレイクをしようとしても、話材があまりなく画一的になってしまい、自分でも面白くないと思っていた
→あまり効果的なアイスブレイクの体験がない、モデルも見ていない、見たとしても自分にはできないと思っている
・・・
とその奥にある要因も影響している可能性は高い、と推察。

ただし、上記はあくまでそれは仮説の域を出ないため、該当するスタッフと対話をしながら「もしかして~ということはない?」と本音を確認してみた。スタッフも思い当たることがあれば、「あ、それが原因かも」という自己を振り返っていた。
そこから、一緒に手を打つべきポイントを絞り込んでいく。

上記のケースでは、様々な理由からスタッフアイスブレイクに本格的に挑んでこなかった。その結果、「具体的な練習不足」という
歴然とした事実があり、やはりそこに手を打つことなくして、出口はない、という結論に至った。
「わかっているレベル」と「瞬時に自然にできるレベル」は大きく乖離している。英語学習と同じである。
「文法はこうで、挨拶はこんな風に」と知識はあっても、リアルな場面ではとっさにでない。
それを乗り越えるには「準備と練習」しかない。
アイスブレイク本当のスキルにするには、どのようなゴールを設定し、どのようにPDCAを回していけばよいのか?を一緒に考え、
プロセス目標を決めて取り組んだ。
プロセス目標とは、「毎週1回ロールプレイを行う時に、苦手なお客様役に対し、少なくとも2分間会話をとぎらせずにできるよ
うにする」などである。

人の意識を変えるには、小さな成功体験を積ませ、自信を持たせるー当たり前になっていることではあるが、単なる偶然ではな
い成功体験につなげるには、やはりスキルの体得は必須である。効率よく体得するためには、「計画的に練習する」。そのために
は、“ここ!”というポイント(ツボ)を押さえて、反復練習すること。店長は無駄な努力をさせないためにも、スタッフの言動から
掘り下げてそのツボが何かをクリアにする。それがスタッフの行動の変化、結果の変化、そして意識の変化につながる。

mindset, mindfulness, meditation

店長の重要な仕事の一つが、環境変化に合わせてスタッフの可能性を引き出し、適応できるように変革を促進することである
が、「変化とは、未来の新たな習慣作り」とも言える。
今回のコロナのように従来の習慣だけで通用しなくなった時がそれに気づくチャンスである。
チーム皆で新たな変化の波を楽しく乗り越えていくためにも、店長として改めて、スタッフ一人一人の活かせること、変えるべきこ
と、変える際の阻害要因(壁)と乗り越えのツボを洗い出す。それが功を奏して、このお店は厳しい状況ながら全員が予算を
達成できるようになった。

「あのスタッフはプライドが高く、自分のやり方にこだわって変化を受け入れない」「以前はバリバリやっていたが・・」いう声をきくことは多い。実際、変化適応のスピードにおいては個人差が出やすい。ただ、これからもっともっと様々な変化が常態化し、スピードも増す。となればこの店長のように“スタッフの変化を効果的に促すスキル”を磨くことが、これからの店長により求められる重要なスキルであると考えさせられた。

PAGE TOP