ラグジュアリーブランド店長ブログ

(24)ストーリーテリングでビジョンを語る!

ストーリーテリングの目的とは?

数年前からストーリーを語る、というストーリーテリングの重要性が叫ばれ、“ブランドの歴史”や、“商品が生みだされた背景”等を正しい事実・知識をもとに、【一つの物語】として販売スタッフが語れるように熱心に教育されるようになった。
ブランドアンバサダーである以上、本来業務の中核である。

店舗空間、製品、ディスプレイ等も、言葉は発しないものの、それ自体で視覚的に凝縮してブランドの価値は伝えてくれる。
しかし、私たちには、その上に「言葉」がある。

言葉には、そのチョイス、組み立て方一つで、お客様の認識を変えることができる、というパワーがある。
調査からは、データ・事実をもとに伝える以上に、「物語仕立て」=ストーリーにして伝えると、何倍もお客様の記憶に残る、ということがわかっている。
たとえば、「この商品は○○という名前です」で終わらず、「~からインスピレーションされてつくったこと、形が~に似ているということから、~という想いを込めて○○という名前がついているんです」と語ったほうが、なぜ?という疑問を解消するだけでなく、「へえ~、そんな想いが込められているんだ」という驚きや感心から、単なる「モノ」ではなく、「人の気持ちがこもった愛着あるモノ」につながる。
だからこそ、商品を見ていただき、触れていただくだけでなく、スタッフが語る“そこに紡がれているストーリー”によって、「特別なモノ」にできる。

しかし、残念ながらそこで満足して終わっているスタッフがいるのも事実である。

優れたスタッフは、さらにそこからお客様それぞれに合わせて「だからこそ、お客様がおっしゃっていた、~というシーンで、この商品を~に合わせてお持ちいただくと、~という気持ちになれます」と、お客様がそれを所有することで得られる気持ちも物語にする。

ストーリーテリングの最終目的は、「商品がいかに優れているか?」ではなく、それが「いかにお客様のハッピーにつながるか?」を絵として描き、共感を得ることである。すなわち、商品のストーリーとお客様のストーリーが重なり合ってこそ、「私のための商品だ」「私にとってすごく価値があるものだ」という共感が生まれ、心がより踊ったり動いたりして、購買につながることである。

教わったことを上手に話せた、で満足しているスタッフと、本質的な目的を理解して、日々物語に磨きをかけているスタッフでは、同じようにストーリーを聞いても感動が違うと感じる。

ストーリーテリングでスタッフの心を動かす!

ストーリーテリングのパワーは、お客様に対してだけでなく、店長からスタッフに対しても十分活用できる。
スタッフに対し、「会社や店舗のビジョン・方針に、主体的に取り組んでほしい」と思った際、あなたはどんな伝え方をしているだろうか?

ある店長は「会社がバッグを強化する、という方針を決めたので、バッグを積極的に販売してください」だけで終わっている。
ある店長は「会社としては、バッグによってより若い世代のお客様層を広げ、いずれは洋服の顧客に育てていきたいと思っているので、バッグを積極的に売っていください」とその背景を伝えている。
どちらも間違ってはいない。
しかし「はい」と答えるスタッフの心の中には「会社が言うことだから仕方がないな」「確かに洋服はなかなか新規開拓は難しいから、まずはバッグかな」というつぶやきがあったりする。

印象に残すだけでなく、共感を引き出し、心躍らせて「その方針に協力したい」という気持ちにさせるためにも、物語を語ってみてはどうだろうか?

ストーリーテリング

今でもある店長が、イベントを成功させるためにスタッフに語っている姿が目に浮かぶ。
店長は突然スタッフに向かって「皆さん、少し目を閉じてイメージしてください」と言った。スタッフはきょとんとしながらも素直に従った。目を閉じているスタッフに向かって店長は自分の言葉で語りかけた。

「●日から始まる私たちの大切なお客様をお呼びするイベント。そこで、今回力を入れている新作のバッグ。この鮮やかで上品なな色合いと柔らかな素材に触れてお客様が喜んでおられるご様子をイメージしてみましょう。このバッグを生み出すために、これまでになく~にこだわり、目の肥えたお客様にも十分ご満足いただける仕上げになっています。実際私も最初に持った時に驚きました。本当に素晴らしいな、と。今回はこのバッグの色に合わせて、イベントの~もあえて調和するようにしつらえてあります。最高の舞台で私たちは商品をお見せすることができます。その貴重な機会を最大限のお客様に味わっていただくために、しっかりと準備をし、私たちも最高のパフォーマンスを発揮できるようにしましょう。
お電話するところから舞台づくりは始まっています。皆さんのエスコートで、お客様が素晴らしいバッグと出会え、喜んで選んでいただける姿をイメージしてお電話しましょう。そのためにも、特別に多くの種類のバッグもそろえてもらえるようにしました。
そのためには、・・・・」

スタッフの顔を見ていると、怪訝そうな表情から、徐々に口角が上がり、笑顔が浮かんできた。
おそらくスタッフにとっては、華やかなイベントのシーンとそこで笑顔でいる自分とお客様が見えている。ハードルはいろいろあるが、その状態を実現したい、という気持ちにつながっている。

「次回のイベント予算は~ですから、一人●件電話してください。イベント続きで大変かと思いますが、予算づくりのためには必要なので」と無味乾燥な中には、イメージを膨らませる余裕も生まれにくく、楽しくもない。

店長の語りかけ方、言葉の選び方、組み立て方、そして何よりスタッフにどんな気持ちなってほしいと思っているかをイメージできているか、すなわちストーリーテラーとしての力を活かしているか否かによってもお店のパフォーマンスは異なってくることを如実に実感した瞬間でだった。

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