SDIのメッセージ

(15)多様化するインバウンドニーズ。日本人同様、個々のニーズをつかむ必要性。

ありきたりの対応の限界

ラグビーワールドカップが想定以上に成功裡に終わり、いよいよ次はオリンピック・パラリンピック。これまでにないほどの外国人が日本に来てもらえる貴重なチャンス。
しかし一方、インバウンドの不満の一位が「施設や店舗スタッフとコミュニケーションが取れないこと」だという。
私も含め、決して「コミュニケーションをとりたくない」と思っているわけではない。むしろ、困っているのであれば何とかしてあげたいと心の中では叫んでいる。しかし、それを言葉や行動で示す際にあれこれ考えすぎて躊躇してしまい、結局タイミングよく手助けできていない。
ブランドブティックでもインバウンドが来店し始めた時は同じような心理的な壁が存在し、買い物の手伝いをしたいと思いつつも、失敗したら・・と考えて二の足を踏んだ経験をお持ちの方も多いのではないか。
しかし、やはり経験はものをいう。
「逃げられない状況」に置かれれば、「人対人」として、“意思疎通”を図るやり方はいろいろあり、ジェスチャー、してみせる、紙に書く、スマホを活用する、などなどあらゆる手段を講ずることが大切で、「自分が困っていたら・・」という気持ちになってできることをやる」という発想の転換ができるようになってくる。
特に今や「インバウンドこそ販売チャンス。積極的にアプローチしよう」という姿勢がブランドブティックのスタッフには必須条件となっている。
ところが、時代は止まってはいない。そのインバウンドも中身としては刻々変化し続けている。
たとえば、富裕層だけでなく中流層も増えている。団体旅行ではなく、個人旅行が中心になってきている。
来られる国も広がっている。ということは宗教や文化・慣習など背景も広がっている。
来る目的や楽しみ方も多様化している。日本は初めて、というお客様だけでなく、ヘビーなリピーターも徐々に増えている。

このような変化の行き着く先として、おそらく日本人のお客様同様、パターン化したありきたりのサービスだけではそのうち刺激や面白みに欠け、「もういい」となってしまい、足が遠のくという状態が想定される。
事実、中国・韓国・台湾・香港などのお客様は、最初は「有名百貨店やモールでショッピング」を目当てに押し寄せたが、着実にその興味は低下傾向にある。理由としては、「どこへ行っても同じようなつくり、同じような商品が陳列してあるだけで、どこにいるかもわからなくなり、面白みに欠ける」とのこと。
モノ不足(欠乏欲求が強い)の段階では「こんなに綺麗に素敵な商品がたくさん並んでいる!」というワクワクが重要であるが、あっという間に富裕層を中心に「成熟化」の段階に突入した今、画一的な整理された商品だけでは、もはやワクワクは創りにくくなっている。
となると、私たちも次のステップをにらんで「では、何で引き寄せるか?」をインバウンドに対しても真剣に考えることが重要となっている。
一般の飲食店や個店と違って、ラグジュアリーブランドはPRの仕方や商品自体を個別化することはできない。
となると、やはり「人対人」のサービスにおいて「ワクワク」を創り出していくことが求められる。
しかしそのワクワクは、日本人同様、旅行者ごとで異なる。
だからこそそこに、相手を知り、サービスニーズを踏まえて対応するという力が必要になる。
(もちろん、それは何でも相手の言いなりになることではない。できること、できないことを明確にしたうえで、何をすべきかを考えることが前提である。)

ある空港の免税店スタッフの言葉

国際空港のラグジュアリーブランドの免税店と言えばかつては「買いそびれたモノやお土産を安く買う場所」という認識をもった人が大半だった。
しかし今やその役割の重要性はおおいに増している。すなわち「その国の玄関口という位置づけで、国及びブランドの代表として海外からのお客様を歓迎し、気持ちよく送り出す場所」「最後にいい思い出をつくっていっていただく場所」「安心して買い物できる場所」という前提で接客をする空間になりつつある。

あるスタッフに聞くと
「しょっちゅう国内外を行き来されるお客様は実際にかなりいらっしゃいます。その方々は、当店だけでなく世界の空港の免税店でも買い物をされます。だから私たちのブランドにとって国を超えて重要な顧客様である可能性も十分あります。だからこそ、ぞんざいな対応ではなく、その方の旅にまつわるお話や時間の過ごし方、背景などを雑談的にでもお話しすることでリラックスしていただいたり、“またこの店に寄りたい”と思っていただけるようにおもてなしすることは私たちのミッションです。」
とのこと。実際に「おかえりなさいませ」や「いってらっしゃいませ」というパーソナルな声掛けをしている接客も随所に見られる。
同時にこのスタッフは「やはり一人でも多くの方に“日本はいいね”と思っていただきたい。そのために自分ができることがあるのであれば、できる限りのことはしたい」と笑顔で答えた。

誰のためのサービスか?すべては自分たちに返ってくる!

近い将来、もっともっと規制が緩和され、国内外問わずシームレスに世界中の人が行きかうことが想定される。
そうなると否が応でも私たち自身もっともっと見識を広めていくことが必要となる。
たとえば、英語表記の一般化、ベジタリアン対応、ハラル対応、wi-fi対応、支払い対応など課題も多い。
私たちが当たり前と思っている中に、外から見れば「不便」と感じることはまだまだ多い。
すべて外の基準に合わせる必要はないが、おもてなしとは、点の話ではなく、インフラも含めた面の次元で求められる。
インバウンドはそのことを私たちに気づかせてくれる存在でもある。

インバウンド市場はこれからの日本経済を支える一角になってきている。
グラフからも分かるように政府はインバウンド消費として2020年、8兆円を目指している。
旅行において財布のひもが緩くなることはあるにせよ受け身だけでは限界がある。
自然などの固定的な資産を活かしつつそれぞれのお客様と共に「ワクワクを創り出す」という働きかけにさらに磨きをかけていくことは私たちにとってもメリットになる。

店頭には今日もインバウンドのお客様がわざわざ来てくださる。
それは、身振り手振り、スマホアプリ、笑顔など駆使できるものは駆使し、お客様に「日本での接客は親身だった」という思い出作りに貢献できる貴重な接点であると同時に未来の自分たちに返ってくる種まきでもある。

以上

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