ラグジュアリーブランド店長ブログ

(14)ダイバシティー何がどう違うのか?を“知る”ことからスタート!

●受け止め方が違う。なぜ?

先日、日本のブティックで働く中国人の女性スタッフと、その店長の双方から話を聞く機会があり、考えさせられることが多々あった。そのスタッフは、ここで働き始めて数か月。このブティックでは初の外国人スタッフ。経緯としては「アニメ等の影響もあり日本に興味があり、留学。卒業後も日本で働きたいと思い、接客の仕事に就いた。将来は中国に帰ってビジネスをしたい、と思っている。英語も日本語も堪能で、接客に対してもアグレッシブ。

<スタッフに対する店長の声>

(強み)
*特に海外からのお客様に対しては、「売れる」という自信があるため、攻めの姿勢でいける。実際に売り上げもいい。

(課題)
*業務面においては確認がおろそかになり、ミスをすることが他の日本人スタッフに比べると多い。その際は「あせらなくていいので、仕事は丁寧に」と伝えている。
*また、ミスもある意味仕方のないことだと思い、そのつど「これってどうかな?」「本当にこのやり方でいいのかな?」と気づいてもらえるように指導している。
*配慮していることと言えば、店長として威圧的な印象を与えて本人が萎縮しないよう、何かを依頼する際も「すみませんが~していただけないですか」というクッション言葉を添えるようにしている。

(店長の悩み)

*就業時間ぎりぎりに入ってきて、仕事にとりかかろうとする。やんわり「スタートする際は余裕をもって来てね」とは言ったが、その後も改善されない。
*依頼ごとがあった際、不安な面もあるため「本当に大丈夫?」と聞くと必ずと言っていいほど、「大丈夫です」と返ってくる。だからお願いすると、結果できていないことがある。「なぜ相談しないの?」と聞くと「できると思っていたので」という返事。
*「これはすぐにお願いね」と依頼したことも後回しになっていることがある。「すぐに、とお願いしたよね」と指摘すると「別の~をやった後にやろうと思っていた」とのこと。
*些細なことだが、日々それが発生することで、少しずつフラストレーションが蓄積。そこで先日、「些細なことかもしれないけど、もう少しホウレンソウとか意識してもらえるとすごく助かる。あなたの信用も上がると思うな」と伝えた。
すると「私はやっていますけど。一体何が言いたいのですか。言いたいことがわかりません!」と反抗された。今までそういうスタッフはいなかったので、店長としてはショックだったのと、「やっぱり日本人スタッフでないと難しいな」と実感した。

●違っていて当然、という前提で

店長の悩みはよくわかる。一方、中国人のスタッフの考えを聞くと、彼女は彼女で適応しようと精いっぱいやっているのに、どこかう
まくかみ合っていないように感じ、同様にフラストレーションがたまっていた。相談できる人もいないため、毎日中国のおばあちゃん
にメールをしているとのこと。決して意図的に反抗しようと思っているわけではないことがわかった。
では、なぜこんなことになるのか?そのスタッフが育ってきた背景も考慮すると、ギャップの主な要因として以下のようなことが挙げられる。

*中国は日本以上に「契約社会」であり、契約の中で仕事をする。→就業時間が10時からとあれば、10時に職場についている状態を当たり前と思う。その認識を変えてもらいたい場合は、「10時にすぐに~にとりかかれるようにする前提での契約である」ということを事前に伝えておくこと。

*中国は日本以上に「無駄なく合理的」であることを重視する。→気づかせんがための「~で本当にいいのかな?」などの遠回しの言い方や「丁寧に」「すぐに」など具体性のない伝え方では伝わらないどころか、イライラさせる。→はっきりと「~までに~してください」「必ず~と見比べて数字が一致しているかを見てから~に取り掛かってください」とシンプルかつ具体的に伝える必要がある。

*日本ではクッション言葉をつける、という習慣を知らない人も多い。→「すみませんが~」は額面通り謝罪ととらえられるため、指示内容より「何を謝っているんだろう?」の疑問がわき、大事なことが伝わりにくくなる。→「~をしてください」と伝え、やってもらったら「ありがとう」のパターンで。

*中国では競争も激しく、上昇志向が強い人も多い。→「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫ではない。できない」と自ら言ってしまうことはチャンスをつぶす。「まずは“できる”と言う」が当たり前。やってみなければわからない、という前提。→まずは任せる。その後、進捗をチェックし、「何%進んでる?」「あとの●%はどのくらいかかる?」「そこまでを~までに終えられる?」と具体的に聞く。

*中国では日本ほどこまめにホウレンソウを求められることが少ない。→どんな報告をどのタイミングで誰にすべきかまで指示する。
(上記はあくまで一般論なので(中国は広い。地域によっても個人によっても違いは大きい)当てはまらないケースもある)

しかし、最大の問題は文化・慣習の違いというより、私たちの認識かもしれない。
もし、中国人スタッフが見るからに私たちとはかけはなれた人種(たとえば、アフリカの人)であり、日本語が話せないとなれば、「違う」という前提で、違いを一つ一つ埋める努力をしていくだろう。逆にそこにもし共通点を見つけられたらすごくうれしくなる。
しかし、彼女は見た目も表情も日本人と近いうえ、日本語も話せる。そこで、「このぐらい日本に馴染んでいるのだし、こちらも誠意をもって働きかけているのだから、意図を汲んで動いてくれるはず」と期待してしまう落とし穴がある。だから逆に「受け止め方が大きく違う」という事実に気づくと戸惑うケースも多いのではないか。

日本人は単一民族なので、暗黙のうちに共有している部分が非常に多く、たまにそれからはずれるケースがあると「常識を知らない」という前提で、常識を教えようとしてきた。
しかし、グローバル化が進む中で、当然守るべきものと、逆に「本当にそれは意味があるのか」を多面的な視点で見て、問い直す必要も徐々に出てきている。
過剰包装や過剰サービスと言われる状況も踏まえ、これからさらにグローバル化していく中で、新しいスタンダードも求められる。
そういう中で、「違った視点」を持った人材は、ある意味重要な情報源であり、新たな気づきを与えてくれる存在でもある。

店長として、「統一」「秩序」を重視する気持ちは分かるが、それはある意味、管理しやすいよう固定化された枠に、異なる価値観の人を抑え込むことにつながってしまう。
海外のスタッフが入ってくる、というのも「時代の転換期」を意味しており、パイオニアとしてこのチャンスを将来のためにどう活かせるかという発想で、日々「実験」していく、という心の余裕が新たな価値を生み出すことにつながるのではないだろうか。

2019年11月17日
株式会社サービスデザイン研究所
サービスデザイナー 袋井泰江

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