ラグジュアリーブランド店長ブログ

(10)店長と育成―店舗は情報がぎっしり詰まった貴重なメディアスペース!日々ワクワクを創り出すために必要なこととは?

 ■場のエネルギー、実物の迫力

買いたいものがあっても、暑さが厳しく外出がおっくう、重いものをもって帰ってくるのが嫌、探し回る時間がもったいない・・要は面倒、という悩みをいっきに解決してくれるのがオンラインショッピング。
比較もできる、解説も読める、レビューも確認できる、関連商品も簡単にみることができる。
もったいないと思っていた買い物時間もネットを見ていると時間を忘れ、のめり込んでしまう。

「それに比べると、店舗は限られた商品しか置いてない、聞かないと深く解説してもらえない、買わされるかもという心理的圧迫を感じる」と言う人も増えている。だからこそ、オンラインショッピングは成長し続けている。

そんな声に対し、もっともだ、と思うこともある。しかし、一方で“ラグジュアリーブランド”となると、同じようにはくくれない、とも感じてしまう。

ある本に書いてあったが、どんなにインターネット上にある精巧に写された名作と言われる絵画(の写真)を眺めても、やはり美術館に足を運び、実物の前に立ったときに感じる本物の迫力や周囲の空気も含め、その場で感じる興奮は体験しえない、と。

人間は目・耳・鼻・口・手などの五感を使って体感することで、脳がフルに活性化し、“ぎゅっと凝縮された濃い情報”、言葉では表せないレベルの情報を一瞬にして受信する。

それが一種の「体験」である。

「体験価値」とよく言われるが、ジェットコースターに乗る、釣りをする、というような動作というより、その動作を通して簡単には説明できないほどの量の多面的な情報を五感と脳で感じとることにこそ意味がある。そこからスリル、ワクワク、悔しさ・・という感情が呼び起こされ、それが時に想像や期待を超えた感動につながる。

■ラグジュアリーブランドの路面店の役割

ラグジュアリーブランドはその感動レベルを直接的にお客様に感じていただくべく、たとえば“路面店”を出す。

路面店はブランドの「世界観」を表す、と言われるが、コンセプト作りから、実際の仕上がりまで、ブランドとして五感を通じて感じてほしいことを細部にわたりこだわって具現化する。床、天井、壁、装飾、どれ一つとっても調和を崩してはならないのである。

つまり、そこに足を一歩踏み入れただけで「場」の力が働くようにとプロの目でデザインされ、仕上げられている。

その重要なパーツとして商品も置いてある。

くどくどした説明の前に、まずは目から入る情報、香り、触れた感触等から重厚感や楽しさを感覚で感じ取ってほしい、そんな思いが込められている。

だからこそ、路面店はまさに宝石箱、アートと言える。

ビジネス的に言えば、路面店はコストが嵩むうえ、百貨店ほどの集客も難しい、外商特典も出せない、など不利な要素もある。しかし、ネットでもカタログでも伝えきれない凝縮した情報を伝えるには、やはり「本物を体感する場」が必要である。

そう考えると、まさに店舗はブランド側からすると非常に重要な「メディアスペース」である。

しかし、そのスペースをどれだけその目的に向けて意義あるものにできるか?はデザイナーの手を離れ、そこに属する店長・スタッフの力量となる。

その際一番の壁は、お客様の情報の受け止め方は様々であるという点である。

単に美しく整然としているだけでは、「このブランドはたかぴしゃで何となく冷たい。お客を軽く見ているのでは?」という誤解も生まれることもある。

伝えたいと思うことと、実際に伝わることは別物なのである。

そのギャップを埋めるにはどうしたらよいのか?

人は静止したものより動くものに目が行きやすい。つまりどれほど素晴らしいモノでも、人が動いていれば、そこに目が行きやすい。

一番動くのはスタッフである。だから何よりも注目を集めてしまう。

まさに動き、しぐさ、表情、発する言葉、すべてを通してブランドの想いを凝縮して発信するカギとなる存在といえる。

同時に「体験価値」となると、双方通行のやり取りを通じて、「心が通いあう」「つながりを感じる」と受け止めてもらうことが余韻につながり、「また体感したい」という感覚を創り出す。

そう考えるとスタッフは単に販売するためにそこにいる人、ではなく戦略的に非常に重要な位置づけとなる。

■ブランド店長の役割―意識的にワクワクを創り出す思考を!

しかし、人間は慣れの動物でもある。どんなに素晴らしい空間に身を置いていても、スタッフからすれば毎日同じような光景を見、同じような説明をしているうちに知らず知らずすべてが当たり前になってしまう。つまり自分たち自身の感動が薄れていくのである。

ブランド店長の役割は、まさにこの「当たり前」との闘いでもある。

いかに与えられた貴重なメディアスペースを今日も価値あるものにできるか?いかにワクワクできるものにするのか?

お客様を飽きさせないだけでなく、スタッフを飽きさせないよう、一日一日のワクワクを創り出す仕掛け、体制づくりの工夫が必要となる。

「数字数字」だけでも人は動かない。日々の些細なことにも新たな発見や気づき、新鮮な学びを見出せるように思考のトレーニングをすることも実はブランドに対し大きな貢献になっているのである。

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