SDIのメッセージ

(9)店長と育成 新卒の土台作りは従来の1.5倍のエネルギーが必要!

メンター(OJT指導員)の役割とスキルの重要性

 ■旅人化する新入社員・・

 7月、新卒が頑張ろうという決意と緊張をもって入社してきて3か月。基礎を一通り教わり、徐々に独り立ちしていくタイミングでもある。

人づてにはいろいろ聞いていたものの、実際には長い学生生活に別れを告げ、初めての会社生活。慣れないことばかりで、必死についていこうとする反面、ミスもしてしまい、心の動きの揺れが非常に大きい時期でもある。

学生時代の慣れた環境で安心感をもって過ごせた日々、大半のことを自分で計画でき、自分らしくいられた環境から、突然半分「よそ者」あるいは「お客さん」的な感じでもあり、一方で「下っ端なんだから」「きちんとやらなければ」というプレッシャーも感じ、という異次元体験をしているようなものである。

お給料も大切だが、どちらかというと「早く精神的なゆとりが欲しい!」という欲求の方が強い段階である。

特に昨今は、育ってきた環境の影響もあり、従来と比べると徐々に繊細な人が増えており、リスクを冒してでもチャレンジするというより、失敗しないように慎重に対応する、という守りの姿勢が強いことが新入社員の意識調査からもうかがえる。

ゆえに、同じ失敗体験や同じ指摘や注意でも、その受け止め方においては、何倍も落ち込んだり、気にして引きずるという傾向も強くなっている。

それが重なると、「せっかく入ったのだから・・」という理性よりも「みじめな自分でいたくない」という感情の方が優先し、会社に行きたくない、と心だけでなく体も拒絶反応を起こし始める。

また、そのうち「考えてみたら、そもそも入りたい会社じゃなかったけど、皆がいいと勧めるから・・」という理性の部分でも合理化が始まり、徐々に「自分がそこにいる意味・意義」を積極的に見いだせなくなっていく。

かくして、「新しいステージを探そうかな・・・」という誘惑が頭をもたげはじめる。

そこを待ち構えているのが“エージェント”と言われる人材あっせん会社である。「第二新卒」という市場も引く手あまたであり、

従来に比べると流動化する誘因も多い。

要するに、「真っ白だからこそ、自社のDNAを素直に引き継ぎ、将来的に会社を担う人材になってほしい」と、せっかく採用経費をかけ、吟味をして採用した新卒であっても、根底では「旅人化」が急速に進み、配属された先での仕事や人間関係を含めた環境に価値を感じなければ、簡単に次の場所を探して旅に出てしまう、という状況が今なのである。

ということは、物理的環境だけでなく、最初の「刷り込み」や、先輩等を通した「モデル提示(●年ここで働くとこうなる)」がさらに大きな影響を及ぼすようになっているということでもある。

これまでのように「徐々にわかってもらえばいい」「そのうち分かる」「じっくり育てるから最初はこんなもの」という発想は新人の心の中の幻滅や決裂につながるインパクトをもつことも自覚しておく必要がある。

■土台作りには1.5倍のエネルギーを!-OJT指導員、メンター、育成担当者の役割とスキルアップの重要性

「やめていくのは仕方がない」と言っていると、人手不足が慢性化し、あちらこちらにしわ寄せがくるという悪循環が待っている。

しかし先輩たちも人手不足の中、生産性を問われ、業務に追われる中でどうすればよいのか?

そこで求められるのが、店長の「中長期・大局的視点」に立った、新人育成体制・風土づくりの推進力である。

まったくの新卒が入ってくるということはゼロから教えなければならない。負荷も大きい。

しかし、それをチャンスとして「受け入れ・指導体制の確立」「指導スキルを持った人材の育成」「育てる風土づくり」に取り組むことで、関係者全体のメリットにもなるうえ、今後のさらなる環境変化にも対応できる力をつけられる。

目先の売り上げも大切だが、業績を上げ続けることをミッションと考えると、新人育成を片手間仕事ではなく、戦略的課題と位置付けてきちんとした成果につなげられるかが重要となる。

ただし、その際過去のやり方・ノウハウだけに頼っていては通用しないため、時代の先を見て、新しい発想・やり方を開発するチャンスにすることで効果を上げることが求められる。

従来は「先輩のやり方を盗め」「やりながら覚えろ」「新人が雑務をこなすのが当たり前」「新人はとにかく言われたことを言われたとおりにやればいい」「失敗から自分ではいあがってくるのが当たり前」「先輩にたてつくのはおかしい」という暗黙の掟(?)があったりして、その空気が読めない新人は「失格ね」「気が利かない」「うちのお店には合わない」で片づけられた時代もあった。

しかし、これからは新人個々の強み・弱み・理解度に沿って育成計画を立て、着実にノウハウを蓄積させ、成功体験を積ませる育成でないと失敗する確率が高い。

且つ、縦社会が初めてなだけに、身近に相談しやすい先輩をメンターとして機能させ、メンター自身にも育成力をつけさせるチャンスにすることが体制上非常に重要となる。

メンターのちょっとした対応次第でも新人の意欲や成長度合いは大きく変わってくることを考えると、まずは、そのメンターの育成スキルの向上を促進するのが店長の仕事と言える。

たとえば以下のことを「育成体制」として共有・実践するだけでも効果は違う。

①メンターと店長で新人の育成計画(いつ、だれが、何を、どのレベルまで教えていくか)を立て、全スタッフに役割を振り、共有する。新人とも目標・計画を共有し、定期的に進捗確認し、軌道修正を行う。

②先輩のやり方のばらつきを見直し、効果的・効率的な業務フローを事前に徹底しておく。

➂新人にホウレンソウのルール(どのタイミングで、何について、誰にどのように報告するか)を徹底させ、習慣化させる。

④新人に指示を出す際は、業務の目的・理由を伝えたうえで、具体的な手順を教えてやらせる。また、タイムマネジメントを実践させる。その際、相手の理解度に合わせて必要なら3回言い方を変えて伝える、指示する。また、理解度・定着度を確認するやり方を複数用意しておく。(クイズ、ロールプレイングなど)

⑤普段から新人の仕事ぶり、態度、行動について具体的な根拠をつけてフィードバックする癖をつける。

⑥日ごろから質問形でコミュニケーションをとっていく。(ex.今回うまくいった理由は?・・)

実際に前向きに上記のことにしっかり取り組んだ店舗では、1~2年たつとメンター側から「難しさもありますが、人が育っていくのを実感できて、マネジメントにぐっと興味がわいてきました」「自分にとっても業務の棚卸になり、効率がアップしました」「新人が入ってきたら皆で協力して育てる、がうちでは当たり前の空気になっています」という声が聞かれ、一石5鳥、10鳥につながっている。確かに従来の1.5倍は丁寧に手をかけて育てないといけない状況にはなっているが、それだけに愛着も生まれ、着実に新人が育った時の喜びも1.5倍なのかもしれない。

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