SDIのメッセージ

(8)店長と育成 部下への日々の問いかけの威力

■「思考パターン」が持つ影響力の大きさ

人にはそれぞれ思考パターンというものがある。

たとえば、同じ情報を受け取っても、「なぜそうする必要があるのだろう?」と背景を考える人、「本当にそう言えるのだろうか?」とあえて批判的に受け止める人、一方で「ふ~ん、そうなんだ」と何の抵抗も感じず受け入れる人・・・。情報の種類や状況によってもちろん異なるが、しぐさのクセと同様、とっさに何をどう考えるかにおいても、知らず知らず癖がついている。

私もよく「なぜそう悲観的に考えるの?」と言われることがあるが、逆に私から見れば「なぜそう楽観的に考えられるのか不思議」と思うこともある。

日々受け止めている膨大な情報の量を考えると、人がそれをどのようなフィルターやパターンで受け止めているかで、その先の情報の活用の仕方や優先度、すなわち価値も大きく異なってくると言える。

イケイケドンドンの時代や、よく言われる体育会系で、上からの指示や決められたことを行動化することが重視された時代には、

「なぜ?」と考える思考パターンはむしろ邪魔になることもあった。

「なぜそれをやるの?」と質問しても、返ってくる答えは「そういう決まりだから」「以前からそうしてきたから」というレベルの答えも多かった。それに対して「ちゃんとした理由や根拠がわからないと動けない」となると、機動力が落ち、生産性も落ちる。

「考えている暇があったら動け!」と叱られ、実際にその通りに動けば結果が出た。

だからその時代には「なぜ?」という思考パターンを持たない人のほうが、「素直」「無駄がない」「指示がしやすい」ということで重宝された。同時に、次々やるべきことを決めて、スタッフに指示を出す、そして動かす、ということができる上司ほど成果が出せた。

しかし時代が混とんとしてきて、過去の成功の方程式があてはまりにくい状況に変わった。上司自身もどのような指示を出せば最短で結果が出せるのか見えなくなってきた。

上司は確信が持てないまま「こうすればうまくいく可能性がより高いのでは?」という前提で指示を出さざるを得ない状況も増えた。

その際に、素直な思考パターンの部下ばかりだと、すぐに指示通りには動いてはもらえるが、負荷をかけた割に成果につながらないときのロスは大きい。だから上司は、意思決定する際にさらにプレッシャーがかかる。

自分が50%の確信しか持てないときに、単なる見切り発車ではなく、本当にそれでよいのかを多面的に考えて、より確信を深めたい。

そういう時に頼りになるのが、意外と「なぜ?」と聞いてくる部下の存在だったりする。

たとえば「他の業務も立て込んでいる中で、なぜそれを今一番優先すべきなのか?」と聞かれた際、以前のように「決まりだから」で片づけられない。改めてその理由を説得力をもって伝える際に、自分自身も改めて多面的に考えぬく必要が出てくる。

「色々聞いてくる部下は面倒」「考えるより動け」「屁理屈ばかりこねてないで、言ったとおりに動いてほしい」という状況から、むしろ「質問もしないで取り組もうとしている部下は本当に大丈夫だろうか?」「考えない=成果に対して責任を感じていない可能性もある」「自分の言ったことをうのみにするのではなく、いろいろ質問しあうからこそ、より成功確率を高めるアイディアが出てくる」というくらいの発想の転換が必要な時代である。

■店長が何をどう問いかけるかでスタッフの思考パターンが醸成される?!

しかし、最初からそういう部下ばかりではない。また、何でもかんでも「なぜですか?」と聞いてくるだけでは、それこそ生産性も落ちてしまう。ではどうしたら良いか?

私自身、体験から

  • 常に上司からどのような問いかけをされるかで部下の思考回路は徐々に作られていく
  • だからこそ、上司は部下に対して「どのような質問を投げかけて思考回路を創っていくか」を考えてコミュニケーションをとることも重要である
  • それが人材育成の重要な部分を占める

ということに気づいた。

実際、私はどちらかというと社会人になりたての頃は特に深く考えない思考パターンだった。矛盾を感じたとしても「世の中そうなんだ」で考えることをある意味放棄していた。そうやって受け入れたり流されたりしているほうが波風もたたず、エネルギーを使わなくて済む、という想いもあった。

しかし、転職して入った会社で、上司・先輩から指示されたことをまじめにやっていると、逆に「なぜ今それが必要だと思う?」と聞かれる。何か答えると「それはなぜだと思う?」と質問される。普段考えていないだけに「う~ん、わかりません」と答えると、「例えば‥でもいいので考えてみて」と言われる。すると強制的に仮説を立てざるを得ない。半分やけになりながら、「~だからですかっ?」と答える。すると「ほお~、なぜそう思った?」と今度は自分がなぜその答えを導き出しかを聞かれる。

最初は「いちいちめんどくさいな」と思うものの、抵抗できないので、考える。しかし、時間の経過とともに、「きっと、なぜ?と聞かれるな・・」と思うので、先回りして自分で答えを用意するようになる。すると、知らず知らず、何かを見ても「なぜなんだろう?」という思考が自然と働くようになっていた。

■本質を考える思考パターンづくりの重要性

「なぜ」が見えてくると、確信とともによりすっきりした気持ちで取り組むことができる。また、小手先だけでなく、究極の目的に向かってどうすべきかを幅を広げて考えるようにもなる。仕事にも意味が出てくる。問題も自力で解決に導けるようにもなる。

トヨタの強さは5Whyと言われるが、本当の強さは社風としてそれが従業員の当たり前の思考回路になっている点ではないかと思う。そういう風土をつくることができれば、自律的に動ける人も多くなる。

となると、その社風を作るには上司が部下に日ごろどういう質問を投げかけるかである。特にお金はかからない。

「コーチングの面談の時に質問しています」ということではなく、日常会話にその質問が当たり前に入り込んでいることこそがそのチームのゆるぎない強さにつながっていくと考えるのである。

ある店長曰く「私たちの日常会話はたとえば以下のようなものが中心です」

・なぜ今売れたの?何が違ったの?どうしてそれができたの?・・・すごい!

・今日は大変だと思っていた割にタイムスケジュール通りに業務がはかどってよかったね。自分で取り組む前に何を工夫した?すごい!それは今日初めて?なぜ今日はそれをしようと思った?・・・それなら次からもできるからいい体験だったね!

・人が足りないで困っているよね。特にどういう点で一番困ってる?それは何とかしないとね・・・何かいい案は?なぜそれがいいと思った?それを実行するには、私も含め皆でどう動けばいいのかな?●●はできないけど、△△はできると思う。そうすれば改善できる?よし、協力してやってみましょう!

確かにその店舗は店長が何か投げかけると、いろいろと意見やアイディアをスタッフが次々口にしており、且つ建設的であった。

「自分たちの店は自分たちでコントロールする!」という気持ちの良い心意気が伝わってくる風土でもあった。

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