SDIのメッセージ

(6)どこまで注意していいの?どこまで本音なの?・・明確な答えがわからない!

■どこまで注意していいのかわからない・・・

   気遣いの大切さをわかってもらえない・・・

「ブラック企業」「ホワイト企業」「パワハラ」「セクハラ」等の言葉が毎日飛び交う状況で、自分自身が若いころある程度厳しくされて当たり前だったマネージャーたちにとっては、「何がOKで、何がOKでないか?」ということが実感としてわかりづらく、不安を大きくしている。

ニュースやネット記事の断片的事例だけ見ると、背景情報(文脈)がはっきりしない中、「こんなことを言われた」「こんなことをされた」という特定の言葉や行為だけがクローズアップされる。すると「言ってはいけない言葉辞書」のボリュームだけが増え続けていく。

「しつけ」と思ってやったこと、本人のために良かれと思って言ったこと、親しみを込めてしたこと、そういう「思い」はあくまでこちらサイドの視点ことであり、その瞬間「相手がどう受け止めたか」がそれ以上に重要となる。

しかしその相手の感じ方も人によって種々さまざまであり、結局「人間関係で失敗しない」ためには、消去法で無難な言葉、行為を優先しておこう・・・となるのも人間である。

また、コンプライアンス教育を受講し、結局「守り」戦術をとらざるを得ない・・という気持ちになるマネージャーが生まれてくるのもある意味当然といえる。

しかし一方、スタッフの教育もマネージャーの重要な責務である。

「こちらが言わない(言えない)分、“気づいてほしい”と思っても、その思いも(昔ほど)通じない」という悩みを持っているマネージャーも少なからずいる。

実際、ダイバシティが進んで価値観や働き方の多様化が進むと、お互いに対するちょっとした「気遣い」を教える(?)ことはあきらめざるをえないという店長の声も耳にする。

ある店長は「以前はたとえば自分の退社時間になっても、周りがすごく大変そうであれば、“お手伝いしましょうか”という声かけや、申し訳なさそうに“今日はお手伝いできずにすみません”という声の掛け合いがあり、気にしてくれているんだな、自分も逆の立場の時には配慮しよう、という気持ちになりました。そういう中で、おのずとチームワークも醸成されていきました。しかしたとえば今は若い世代のスタッフや中国人のスタッフは合理的な考え方が中心ですから、“残業をしてはいけないからお手伝いしましょうかという判断は勝手にできない。むしろ声をかけることで気まずくなるので、あえて声をかけずすっと帰る”と言われる。それも理解できる。割り切って仕事をする時代ですね」とつぶやいていた。

このように「自分の考えが古いのかもしれない」「今の時代にあわさなければ」と焦ることで

「言いたいけど言えない、さりげなく気づかせようとするけど気づいてくれない、かといって厳しめに言うとパワハラと言われる恐れもある・・・」と指導側が一人悶々としたり、「仕事で業績を上げること」以上に「スタッフから~と思われているのではないか?という妄想レベル」でストレスを抱えることになることもありうる。

ただ、それもいずれ疲れるので、最終的に「見ざる、聞かざる、言わざる」という無関心主義になっていくケースもある。

正直、「誰が悪い」ということはないのに、ストレスを抱える状態は決して望ましい状況とは言えない。

決して「昔はよかった」とは思わないし、かといって今の状況もよくない。となると、何か新たな打開策を見出して前向きな相乗効果につなげるやり方がマネージャーには求められている。

■大切なのは「枝葉」ではなく「幹」「根」!

いろいろなケースを見てきて、結局「ハラスメント」云々の問題も、注意の仕方にしても、表面的な言い方(枝葉)以上に大切なのが、その奥にある信頼関係という「根幹」ではないかと思う。

信頼関係自体構築することは難しいものではあるが、しかし、その本質をしっかりとらえてマネージャーとしてかかわり続けることで、無駄な気を遣うことにエネルギーを使うのではなく、共に成長する建設的な方向にエネルギーを使っていける。

たとえば、お客様との関係でも「うまい表現をして(言いくるめて)販売しよう」というだけで対応しても、一過性では買っていただけても、最終的には「いつもうまいこと言って、結局売りつけようとしている」となれば、その後何を言っても受け入れてもらえなくなる。むしろ、「お客様のことをよく知って、何とかより素敵になっていただくためにやるべきこと、できることを誠実にやろう」とコツコツ取り組んでいることに信頼を寄せてくださり、「あなたはどう思う?」と逆にこちらの意見を尊重してくれるようになる。

スタッフとお客様では立場は異なるが、信頼関係構築の本質は「その場しのぎではなく、しっかりと相手がどうしたいか、どうなりたいかを知って、Win-Winになるよう中長期的視点でやるべきこと、できることを誠実にやっていく」という点は共通している。

要は「根」「幹」を強化することで、「枝」「葉」もきちんと養分を吸収し、自ら大きく成長していく。

すなわち、問題の奥に潜む本質と向き合うことで、マネージャー自身の時代や環境への適応力を高めることにもつながっていくと考えるのである。

■改めて、“はじめに店長のビジョン・方針・ルールの共有ありき”

スタッフの視点で考えると、店長と同じように“できれば裏表なくオープンなコミュニケーションをとりながらスムーズに仕事がしたい”と思っている。

店長との関係性も大切だが、他のスタッフとの信頼関係も同様に重要なウエイトを占める。

自分とは違ういろいろな考え方、経験含む背景を持った人たちである。その中で、調和しながら、自分のやりたいことをやりたいようにやっていくためには、いろいろ考えなければならない。

その際に、リーダーである店長に求めるのは、やはりしっかりしたビジョン・方針・ルールであろう。

なぜなら、それが見えなければ「どこへ向かうのか?何が許されて許されないのか?どう動けば最適なのか?」がわからず、無駄なストレスを生んでしまうからだ。

むしろ、その土台がしっかりしており、且つ全メンバーに共有・浸透していれば、お互いに葛藤があった際にも適切なジャッジが下せるし、目的のために効率的に動ける。

また、それがあるからこそ、お互いにやっていることの意味も理解しあえ、信頼関係や助け合うこともできるようになる。

当然「うちの店舗でもそれを打ち出して、伝えています」という答えが多くの店長から返ってきそうであるが、「伝えた」だけでは伝わらないのが職場のコミュニケーションの難しさである。

★まずビジョンとは「~までにこの店を、お客様にとって、みんなにとって、取引先にとって、会社にとってこんな店にしたい」と描くこと。

その際、達成できている状態を具体的にイメージさせられているか?(~という評価をもらっている。数字がこうなっているなど)

また、それに向かって努力することが、それぞれのスタッフの働く動機(キャリア形成やスキルアップなど)とどう絡んでくるか?を本人がイメージし、わくわくするレベルでわからせられているか?

を振り返ったり、スタッフに実際に言ってもらってチェックすることも必要である。

★次に方針とは、「そのために特に今期は~に力を入れて、~という成果につなげる」「~を徹底的に見直し、~という状態にする」など、ビジョン実現に向けて店舗として乗り越えなければならない重点課題を整理して示すこと。

裏を返せば「それをしっかりやれば、ビジョンに確実に近づく」という連動性があること。そして「やればできそうだ」という成功するイメージを持たせるために、具体的な取り組み事項とそれを楽しみながらやるためのアクションプランを工夫すること。

★そしてルールとは、方針にのっとってやるために「うちの店で許されること、許されないこと、その理由」を明確に示すこと。

ルールである以上、経験年数も立場も関係なく皆が「公平・公正」に守るべきこと、という位置づけになる。最初にすべて細かな点をルール化することは実質不可能なので、まずは「新たにとるべき行動」「変えるべき行動」「問題となりそうな行動」等に関して明確にルールを示すことが重要となる。

■反発が出た時ほど土台づくりのチャンス!

慣れないうちは皆の解釈もバラバラになりがちで、「以前のほうがやりやすかった」「このルールはおかしいのではないか」「こんな状況ではルールは適応できない」などの反発の声も聞こえてくる。しかし、それをすべてうのみにして妥協すると「土台づくり」は失敗する。

反発に対しては、「このルールをあえて打ち出した背景」を再度共有する、やりにくさに関しては「では、どうすれば皆がもっとスムーズにやれるか?」を一緒に考える、など常に前進させる前提で葛藤と向き合うことこそが重要となる。

事実、掃除の仕方一つでも正しく意義が浸透していて、レベル・やり方が「共有・徹底」がなされている店舗と、それがあいまいなままのため、いちいちチェックし、気づいたことをフィードバックしなければならない店舗では、効率面だけでなく、その他の面でも結果的に大きな差が生まれてくる。

ブランドでも「見えないところこそ大切」と言われるが、問題が表に出てくるときは、その対処法を考えると同時に、実は見えにくい土台の部分がしっかり確立できているかどうかを再点検すべきという信号かもしれない。

 

 

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