SDIのメッセージ

(29)ロールプレイングは本当にスキルアップにつながるの?

ロールプレイングは効果的!

ロールプレイングとは、「役割演技」と訳されるが、役割を設定して演じることで、実際にそれを行う際に必要とされる要素を具体的に掴んでいく練習法である。
販売スタッフであれば、お客様に対して「こういうとき、具体的にどうすればよいか」を実際にやりとりしながら掴んでいく方法である。
特に対人スキルの場合、「このボタンを押せば、必ずこういう反応が来る」と決まっているものではない。しかし、だからといって「数打てば当たる」というやり方では効率が悪すぎる。
ゆえに様々な研究を重ねながら、「このやり方の方が成功確率が高い」という原理原則が導き出されてきた。
それを知ることは非常に重要である。
ただし、頭で理解しただけでは、とっさのときに体が動かないということを考えると、ロールプレイングは体験学習だけあって、やればやるほど「コツ」が掴め、実践において成功するための架け橋となる。

ロールプレイ 接客

そこで「販売スキルアップ」や「クレーム応対」の研修においても、できる限りロールプレイングを取り入れて、様々なお客様のタイプや状況を設定し取り組んでいただくようにしている。
また、実演するだけでなく、観ている側が観察眼を働かせ、会話のキャッチボールや動作・しぐさ等を通して「何が成功/失敗要因か」を抽出し、成功要因をできるだけ自分の接客に取り入れられるようなステップを重視している。

現時点では対人のスキルアップにおいてロールプレイングは大きく貢献してくれる。
そこで、できるだけ店舗においても朝礼や待機中の短い時間を使ってでもロールプレイングを奨励しているが、一方で、根強い抵抗感もありなかなか定着しない現状がある。
そこで、何が阻害要因になっているのか?どうすればそれを乗り越えられるのか?を実例を踏まえて考えてみたい。

ロールプレイングはやりたくない!なぜ?

ロールプレイングに対する抵抗感としては主に以下のことが挙げられる。

  1. 本当のお客さまではないため、リアルな接客にならない。
  2. 他の人が見ていると緊張したり、恥ずかしかったりして本来の自分の実力が発揮できない。
  3. 他の人からのフィードバックに納得がいかない。
  4. 厳しいことばかり言われて、自信を無くす。実際そういう体験をしてきた。
  5. いろいろ考えながらやると、いつもの自然体の接客にならない。むしろ失敗する。やってもしかたがない。
    などなど。

結論から言えば、ロールプレイングは自分に「つらさ」を強いるものであり、その割に自分にとって納得いくような達成感や上達感が得られていない、ということが大きく影響している。
実際私もロールプレイングがうまくできず、先輩から厳しい指摘がとんで、泣き出してしまったスタッフの話を聞くこともある。
確かにロールプレイングは楽しいばかりではない。心理的にしんどい面もある。
ただしそれは、恥ずかしい云々ではなく、「自分自身の現状を直視しないといけない」というしんどさである。
未熟な点に関してはできれば目をつむっていたいというのが私も含めた人間の本心であろう。
しかし一方で、自分の接客の仕方について貴重な「気づき」の機会があり、そこで気づけるからこそ、ワンランクアップの道が見えてくる、というのも事実である。
多くの販売スタッフの方々を通して、ロールプレイングを振り返り、素直に自分のできていない点を受け入れ、「今後~していきたい」と具体的に発信できる人は、心理的に強いと同時に、実際にその後期待以上に成長しているケースが多いという事実がそれを証明している。
同時に、指摘をする側も、相手に伸びてほしい、という気持ちをもって、相手が指摘内容に納得し、主体的にそれを乗り越える行動をとることを前提とした伝え方を工夫することも大切であり、それもまたコミュニケーションのトレーニングと言える。

ロールプレイング?うちでは当たり前ですよ!

長年お世話になっているあるラグジュアリーブランドのブティックでは、ロールプレイングは何年も前から「当たり前」になっており、スタッフが経験年数に関係なく、お互いにオープンにコメントをしあい、お互いに褒め合う、という風土が根付いている。
長年やっていると馴れ合いになるのではないか?という懸念は皆無で、ロールプレイングの当番になったスタッフはスタッフ役はもちろんお客様役も前日からしっかり準備し、真剣そのもので、良い意味での緊迫感が漂う。
見ている側も一挙手一投足、それこそ一言一句、食いいるように見つめ、静かにメモしていく。
ロールプレイングが終わった後のコメントは、すべてが具体的事実に基づき、だからこそ「お客様の立場で~したらもっと良い」という内容でまとめられている。
朝礼時に行うのが通例だが、その緊張感を持続しながら店頭に立つため、店舗全体でも「今日一日どれだけのお客様に最高品質の接客を提供できるか」という暗黙の共通目標が浸透していることがわかる。
Welcomeの笑顔一つから、細心の注意を払っていて、きびきびした動きは見ていてすがすがしい。

何より私が驚いたのは、新卒で入社したスタッフと4月の導入研修で接客の練習をした際は、当然ながら敬語もままならず、説明も商品の扱い方も初めてだらけで、一つ一つ確認しながら進めていく状態だった。しかし、6か月後フォローアップ研修で再度接客ロールプレイングを行ってもらうと、驚くほど素晴らしい接客が身についており、しかも、余裕がある分楽しそうにお客様と会話しているのが印象的だった。
話を聞くと、配属間もないころからロールプレイングを行い、先輩からもらったコメントはすべて一つずつクリアするようにしてきたとのこと。最初は慣れないため、本当に大変で、ぎこちない接客で落ち込んだりもしたが、先輩に励まされながら3か月を過ぎるころから、徐々にそれがつながってきて、自然体でできるようになり、お客様からも褒められることが多くなった。それが楽しくてより頑張ろうという気持ちに支えられ、先輩のロールプレイングからも貪欲に学ぼうと日々勉強しているとのこと。
新人スタッフ曰く、「先輩の素晴らしい接客を見ていると、自分にはそういう才能や感性がないし、この仕事でやっていけるのか不安になることもあったが、とにかく地道に練習して、マスターしていくうちに、自分でもやれる、と思う瞬間が来る。あくまでスキルなのだから、早道や近道ばかりを探すのではなく、積み上げていく、と腹を決めたらロールプレイングも本当に身になることばかりで、自分の番が来るのが怖い半面、楽しみです」。

それを聞きながら、芸事もスポーツも、職人技も、すべてできないことをできるようにしていく地道な積み重ねがあってこそ基盤が確立し、そこから飛躍できる、まさに「守破離」の世界。同じように、人の心を動かしていくという難易度の高い販売の仕事も、やはりプロとしてそういう基盤づくりがあるからこそ、お客様から見ても「さすが」という域に達することができる。

ロールプレイングはそういう意味で、効果的なやり方で、丁寧にやり続ければ、その努力を裏切らない練習法であると私は思う。
次回のブログで、より効果的な店舗でのロールプレイングのやり方について、具体的なポイントを挙げていきたい。
以上

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