SDIのメッセージ

(28)スタッフの行動強化につながる!「~してくれてありがとう」

思いがけない「ありがとう」

私は、四季折々の変化を楽しむために住まいに隣接する遊歩道を散策するのを楽しみの一つとしているが、その途中にご近所の方々とのささやかな触れ合いがある。
どちらかというと私自身は音楽を聴いて、好きな風景を写真に収めるなど、自分の世界に没入したいタイプなので、
積極的に自分から話しかけていく、ということはない。すれ違いざまに笑顔で挨拶をするだけ、ということが多い。
そんな私であるが、ある日ご近所にお住いの車いすの女性に挨拶をしがてら「今日もいいお天気で良かったですね」と付け加えた。すると「そうですね。やっぱりお天気がいいと気分も違いますよね」と答えて下さるので、「でも徐々に冷え込むらしいので、風邪ひかないでくださいね」というと「お互いにね」とたわいもない会話を交わして行き違った。
ところが数メートル行った先で、その女性は車いすを止め、くるりとこちらを振り返ってはっきりと気持ちを込めて一言。
「声をかけてくれてありがとう!」。
たった一言ではあるが、私を幸せにさせてくれた一言だった。
と同時に、「この人にはこれからも挨拶だけではく、何かひと言声をかけよう」と思った。

balloon, heart, love

行動強化につながる「ありがとう」

考えてみれば、昔から「ほめてやらねば人は動かじ(ず)」という言葉もあるように、ほめられたり感謝されると、人はその行動を次から意識的にとるようになる傾向が強い。いわゆる「行動強化」と呼ばれるものである。
小さな子供でも、「お手伝いしなさい!」と言われて「叱られるのが嫌で仕方なく動く」ことはある。しかし、そういう嫌々な気持ちでやるところからは「主体性」や「積極性」はあまり期待できない。
一方で、ごほうびがもらえなくてもすすんでお手伝いをすることも多々ある。先日も幼い子が率先して他の人の靴を揃えていた。おそらくそういう時は過去の体験から、「これをやれば、きっとほめてもらえる」「ありがとう、って感謝してもらえる」というワクワク感や期待感が行動を後押ししている。

仕事に置き換えれば、責任上やらなければならない、とわかってやっている仕事以上に、主体性や積極性をスタッフに求めるのであれば、インセンティブとしてお金や役職をちらつかせるだけでなく、「喜ばれる」「感謝される」「すごいと言ってもらえる」などの欲求をきちんと満たしていくことが重要である。
その一つがこの「ありがとう」であるが、同じありがとうでも、以下の2つのポイントを入れることによって相手に与える影響力の大きさも変わってくる。

1)具体的な行動にスポットライトを当てる

予算達成など、明確に評価されることであれば、インセンティブも含めフィードバックはしやすい。
しかし、意外と大切なのは、ルールでは決めきれない誰がやるかはっきりしていない業務である。率先してやったところで、人事評価に反映されるかわからない、縁の下の力持ち的なサポート的な業務。
「そんな時間があるのであれば、自分の業務か、数字につながる仕事をしたい」「自分がやらなくても誰かがやってくれる」という意識が蔓延しているところでは、一体感も創りにくい。
もちろん、あいまいにしないのが一番ではあるが、とっさの時も含め、各スタッフが自分の担当外のこういう業務に積極的に手を差し伸べることができるようになってくれると、チームワークもスムーズになり、店舗としての基盤も固まる。
では、どうすればよいのか?
店長としては、スタッフ一人一人のとっさの判断や行動をまずはしっかり見て、具体的にどういうときに、どういう行動をとったことがどう素晴らしいのか?を本人が認識できるように伝えてあげることが大切である。
「さっき、○○さんが接客で手いっぱいの時に、お見せした商品をあなたがさりげなくきれいに直したり、片づけるのを見て、ありがたいな、と思いました」など。

light bulb, lights, bokeh

2)具体的な行動の奥にある素晴らしい点を伝える

ただ、たいていのスタッフは「たまたま私の手が空いていたので・・。たいしたことではありません」と謙虚な気持ちで受け止める。
それをスルーするのではなく、「手が空いていても、○○さんの接客に関心をもっていなければできないことですよね。常に自分のことだけでなく、店舗全体が気持ちの良い空間になるように気を配ってくれる点が素敵だなと思いますよ」「他のスタッフも感謝していると言ってましたよ」と、具体的な行動の奥にある日ごろの言動や努力に感心していることを気持ちを込めて伝える。

それによってスタッフに対し、2つの点でインパクトを生む。
1つは、店長がそういうさりげない点も見ていてくれる、という店長に対する感謝の気持ち。
もう1つは、“自分が日ごろから仕事上考えていること”は、主張するだけではなく、こういうさりげない行動の積み重ねを通して周囲に伝わる、という事実。
そこから、「こういうことをさらに大切にしていくと、いいことがある」という確信がもてるようになり、行動に弾みがつく。
それが気づいたらその人の強みになっていくことも多々ある。

店長としてプラスの影響力を発揮していくための武器は実は手元・足元にたくさんあるが、それも使わなければ宝の持ちぐされになる。逆に必要に応じて工夫しながら使えば使うほど、幸せの輪が広がっていく。

smiley, emoticon, anger

車いすの女性は私に対してだけではなく、他のご近所さんにも会話の後必ず「声をかけてくれてありがとう」とはっきり伝えている。
だから、彼女に声をかける人は多く、あちこちで笑顔で会話している様子を見る。
彼女の一言は、東京というお互いに名前も知らない大都会であっても、出会いがしらに挨拶しあうのが当たり前という穏やかでいやされる空間を創り出すことにつながっていると感じるこの頃である。

PAGE TOP